美東という会社 |
美東有限会社は2003年に創業した。児島でジーンズの製造、加工、販売を行っており、ジーンズの加工では世界でトップクラスの加工技術を持った職人たちがいる。驚きの商品、加工技術で国内外問わず注目されている。 |
アパレル業界について |
アパレル業界とは衣料品に関わる産業のことで、2014年には業界規模は約5兆円と大きな産業になっていて、世界に対して存在感を持つ日本の企業もたくさんある。最近、アパレル業界は、安くてシンプルなものを着たいという“ファストファッション”、お金を払ってでも自分の好きなデザインを着たいという”スローファッション”と二極化が進んでおり、美東は後者の服を作っている。 昔から学生服やデニムの生産を行っている児島は「アパレル産業の盛んな地域」「繊維の町」として知られておりアパレルに携わる会社は多い。また歴史も古いため伝統の技術や知恵を活かしたモノ作りをするというスローファッションが根付いており、美東もその中の一社として、高くても良いものを世に産み出している会社だ。 |
衣料品加工の世界 |
日本の加工技術は世界から注目されている。ウォッシュ加工というジーンズの加工技術があるのだが、これは日本で開発されたものだ。アメリカから輸入したジーンズを製造工程で一度洗って糊をおとして販売されたのが始まりだそうだ。他にも、穴を開ける加工や、ヴィンテージ加工なども日本人の感性で世界に発信しており、日本で加工をした製品は世界中で流行になり、世界中にファンが出来るアートのひとつになった。 他社から依頼を受けて、その会社のブランドを製作することをOEM(Original Equipment Manufacturer)というのだが、美東は有名メーカーからもOEMの依頼が来るほどの技術を持っている。なぜ、有名メーカーは自社で作らず美東に任せることがあるのか、それは、美東が加工に特化した仕事をしているからだ、と西山さんは言う。 |
なぜ加工だけの会社に任せるのか |
分業で一つのジーンズを作ると、各工程の会社は次の工程の会社に利益を載せた金額で販売する。すなわち、分業が多ければ多いほど価格は高くなり、安くお客様に商品を提供できなくなる。逆に、一社でジーンズの布を選定、縫製、加工、出荷などを行えば会社間のマージンがなくなりお客様に安い価格で提供することが出来る。それでも分業を行う理由は分業しなければ到達できない専門的な技術があるからだそうだ。それに加えて美東のある児島では、加工の職人、染色の職人などの職人の会社が多くあり、お互いがお互いを意識し切磋琢磨することで、技術を高め合い、新しい技術をどんどん生み出していった。そこから生まれた加工技術の種類は豊富で、大手メーカーの企画担当者、デザイナーも児島で現在ジーンズにどれくらいの加工が出来るかを把握している人はほとんどいないようだ。そのため、国内のみならず海外のアパレルメーカーの方もどれくらいジーンズの加工が出来るのか知るために視察にくるという。 |
美東の強み |
美東の強みは、加工を主に行っている会社の中でも加工工程が多いことだ。 一般的な加工をしている会社では、10~15工程の段階を経て製造しているが、美東の行うことのできる加工工程は40工程にまでのぼる。加工工程には穴をあけたり、白い線をジーンズに入れたり、ヴィンテージ加工を施したりなど多々あり、様々な工程を組み合わせることでメーカーの希望に合った製品を生み出すことが出来るのだ。 例えば、ジーンズは、生地発注、生地加工、裁断、縫製、特殊(リベット、ボタン付け等)、洗い加工、仕上げという流れで作られるのだが、洗い加工の中でも、シェービング加工、ブラスト加工、薬品処理加工、クラッシュ加工、ダメージ加工、ペインティング加工、コーティング加工、ストーンウオッシュ加工、バイオウオッシュ加工、オーバーダイ加工、リメイク加工を施し、重ねてもう一度シェービング加工や薬品処理加工などを繰り返し行い合計で40工程も行うことで、このような製品に仕上がるのだそうだ。 この加工技術を求め、メーカーのみならず、芸能界や海外からも直接ジーンズの加工の依頼や注文がくることがあるのだという。 美東では加工の請負だけでなくプライベートブランドの製造、販売も行っている。ジーンズには閑散期、繁忙期があり、それに伴い加工の仕事の依頼にも波があるのだそうだが、忙しいときに仕事が溢れ、忙しくないときには仕事がないという不安定な状態を緩和する為に、自社のブランドを作り、他社の状況に依らず安定して仕事がある状態を作っているのだそうだ。また、自社ブランドを持つもう一つの理由が、児島という地域に世界から求められる技術があるということを発信したいからだそうだ。OEMとして依頼主のブランドの加工をしているだけでは広まるのは依頼主の会社や地域だけ。自社ブランドを作ることで、Made in Kojimaとして児島という地域を世界に発信していくことができるのだ。 |
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Kojimaから世界へ |
一例として、岡山の名産品を用いてジーンズの染色を行っている。岡山産のお茶を用いてお茶染めのジーンズを作ったり、岡山県高梁のベンガラ(土から取れる酸化鉄赤をベースとした顔料)を使ったベンガラジーンズを作っているのだ。他にも多くの名産品とコラボレーションしている。美東が地域と連携した製品を作っていくことで、この地域ならではのブランドにしていくこともそうだが、その名産品のPRになるということ、そして、美東の技術力の証明と多くのメリットがある。 例えば草木染の場合、一般的に、草木染めを行う場合であれば何回も染料にジーンズをつけ、草木から色の抽出を行わなければならないため、大量の原材料と手間がかかり、非常に高価になり、購入が難しくなる。美東はこれを少ない原料で一回の染色で済む技術を開発した。一般的な技術であれば草木染めのジーンズは一着10万円を超えてしまうケースもあり、ブランドの販売力がなければお客様に購入していただけない値段になる。しかし、美東の技術を使うと4分の1ほどの値段で販売することが出来るようだ。この方法のおかげでお茶染めジーンズなどの新商品を発売し、全国や海外のメディアにも取り上げられたほどだ。世界でも類を見ないこの技術は児島という、職人たちが日々精進をしている環境だからこそ生まれたのだ。 日々、日本、世界から加工の注文が舞い込んできている美東。岡山の児島の技術は世界から求められる技術だということを岡山の人に知ってもらい、誇りに思ってもらうために美東は進化を続けている。 |
インタビュアーから |
ジーンズの加工という仕事があるということ自体知らなかったのですが、インタビューをして、なんて奥が深く、しかも世界から求められる技術力を持っている職人や会社がたくさんあるんだと驚きました。しかも美東には世界でもこの人しかできない加工があるといわしめる職人さんもいると教えていただき、世界で唯一の人ってカッコイイなと思いました。 |