OML(岡山医学検査センター)という会社 |
臨床検査、というと日常の中では耳慣れない言葉だが、実は私たちの生活に非常に身近な存在であるのをご存知だろうか。 |
文系理系問わず活躍できる仕事 |
OMLの臨床検査事業における仕事は、まず地域の病院を周り、検体(血液や尿などの検査する対象)を回収してくることから始まる。営業は自分でコースを一つ担当。そのルート上にある病院を順番に訪問し、検体を回収する。患者数の多い病院は、1日に3回訪問することもあるようだ。 営業が回収してきた検体は、社内の検査担当へ渡される。同じ血液や尿を材料とする検査でも、調べたい項目によって検査方法は全く異なる為、依頼の内容に沿って社内にある4つの検査室へと振り分けられていく。 |
・血液学検査:血液に含まれる血球成分数の算定、形態を調べる検査 オート検査室 ・生化学的検査:血清などを化学的に分析し、健康状態や病気の程度を調べる検査 ・免疫・血清学的検査:血液中に感染によってできた抗体があるかどうかを調べる検査 細菌検査室 ・微生物学的検査:感染症が疑われる検体からの病因菌種を調べる検査 ・寄生虫学的検査:寄生虫感染の有無を調べる検査 病理検査室 ・病理組織検査:病変部を含む組織から組織標本を作製し、病変を解析する検査 ・細胞検査:細胞の形態を顕微鏡で観察し、病変の有無を判断する検査 |
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臨床検査技師や、細胞病理検査を専門的におこなっていく細胞検査士(臨床検査技師の上位資格)が営業の持ち帰った検体の検査を担当する。その結果をシステム部門で集約。報告書を作成し、それを営業が病院に届けることで一連の仕事が完結する。 |
どうしてOMLが求められるのか |
OMLの仕事の一つに、機器・試薬の販売がある。OMLで行っているような検査を自院で行いたいという病院に対して、検査の機器や試薬を販売するという仕事だ。 病院がそれぞれ院内で検査を行えるようになれば、OMLへの検査依頼は減るため、ビジネスのことだけを考えると自らの首を絞めることに見える。しかし医療の仕事に従事し、その先にいる患者様のことを考えたら、出来る限り速く検査結果を提供できる形を取ることを優先するべきだと荒木さんは言う。 そして、機器・試薬を病院が持つようになってもOMLの必要性は変わらない。 病院で必要としている検査の中には、機器と試薬を購入し、院内でできる簡単な検査もある。しかし一方で、高価な機器を購入し、メンテナンスをし、機器を操作する臨床検査技師や細胞検査士を雇用しなければできない検査も多数ある。 身近な病院でも検査を受けられる方が患者様にとっては便利だが、大病院と同じような検査ができる環境を完璧に整えようとすると、多額の費用と手間がかかる。医院や診療所といった規模の医療機関にとっては、外部の検査センターの存在が必要不可欠なのだ。 代表の矢吹社長は同社の仕事を「あなたのそばの検査室」という言葉で表現し、OMLが存在する事が地域医療への貢献になると考えている。 OMLの行う検査は、新種のウイルスを発見したり、疫病が発生したときに、いち早く原因菌を究明しワクチンをつくるなど、有事の際にメディアに取り上げられるような目立つ仕事ではない。しかし、日々ドクターが患者様の健康状態を確認する為に必要とする情報を、検査のスペシャリストとして提供している。地域の方の健康を陰で支える、縁の下の力持ちのような仕事なのだ。 |
ドクターからの信頼から生まれた事業 |
分析対象を検体ではなく、水や土に変えた「環境分析事業」や、検査のスペシャリストとして機器・試薬の販売をする「機器試薬販売事業」、検査自体を提供する「健康診断事業」の3つの事業は主軸の「臨床検査事業」のノウハウが活きる事業だが、薬剤師を雇用し、薬局の運営をする「調剤薬局事業」はそうではない。 スマイル薬局は2014年11月時点で8店舗出店をしているが、店舗数を増やす事を第一とはしていない。スマイル薬局を出店する理由は1つ。それは、臨床検査事業で繋がりのあるドクターが独立し、開業する際にかけられる「OMLさん、手伝ってもらえませんか?」という言葉だ。 1951年に医薬分業法が制定され、医療と薬を分けることが求められるようになった。ドクターが新たに病院を開業しようと思っても、近くに調剤薬局がなければ、患者様に不便を強いることになる。ドクターにとって、自分が開業する時、一緒に調剤薬局を出店してくれるビジネスパートナーは必要不可欠だ。 スマイル薬局は臨床検査事業のノウハウから生まれた事業ではない。しかし臨床検査事業で、日々1回から数回病院を訪問している中で築かれた信頼関係がある。そこから生まれた事業が、この調剤薬局事業なのである。 |
OMLの未来 |
OMLは時代の流れに合わせて、検査報告書を電子データで発行したり、電子カルテを取り扱うようになったりと、少しずつ事業の幅を拡大している。しかしOMLが求めていることは、今後もずっと地域医療に貢献し続けること。時代の流れに合わせて廃れる検査や、新たに必要とされる検査が追加されることはあっても、「あなたのそばの検査室」として、検査事業を継続していくことは変わらない。臨床検査事業では岡山県でNo1のシェアを持ち、売上も右肩上がりの状態であるが、事業の柱を増やし、更に2014年には臨床検査事業で全国二位の株式会社ビー・エム・エルと資本業務提携を行うなど、経営の安定化を進めている。もしOMLが検査事業を継続できないようなことになってしまうと、私たちに身近な「地域医療」がストップしてしまう。地域の方の健康を支える責任ある立場として、OMLは事業の継続を責務としている。 |
インタビュアーから |
岡山医学検査センターという社名から、専門の研究機関として自分達の生活とは遠いところで仕事をされているのだと思っていたのですが、話を伺うなかで、とても身近で、自分達の健康を守る仕事をされているのだと知りました。そして、見えないところで支えてくれている人がいるからどこの病院でも手軽に検査ができるのだと知り、感謝の気持ちがわきました。 |